発明家ニコラ・テスラの夢

こんにちはー!!

M1の大矢根です。僕は研究の一環として、ワイヤレス給電技術の実験をしています。
そう! 最近おなじみになってきた、置くだけで充電できるスマホに使われる、あの技術です。


ところで突然ですが、このオブジェは一体なんだと思いますか??

なんだこれは… 手で持った蛍光灯が光る?

今回は、おしゃれネタではなく科学ネタです。
皆さんはニコラ・テスラという人をご存知でしょうか?

ニコラ・テスラは、エジソンと同時代を生きた人物で、エジソンと競い合うほどだった大発明家です。
エジソンは電気製品の体系的な実用化において、大きな強みを持っていましたが、テスラは交流電磁気現象の理論と洞察において、卓越した才能の持ち主だったそうです。

現代の技術にも通じる、テスラの交流発電機(図の出典:Wikipedia)

実は、冒頭の写真は、テスラの発明であるテスラコイルの一種で、以前に、僕のサークルで文化祭の出し物として作ったものです。円錐コイルの上部からの電界によって、手で持った蛍光灯が光っています。


テスラコイルは「共振変圧器」と呼ばれる装置ですが、アートやパフォーマンスで使われることもあり、高周波高電圧で火花放電を起こすような、派手なデモンストレーションが見どころです。


ところがテスラは、これを使って単なる見世物だけではなく、
無線で全世界に電力を送ろうという壮大な計画
「世界システム」
を実施しようとしたのです!

巨大テスラコイルによる無線送電タワー(写真の出典:Wikipedia)

「世界システム」は、超大型テスラコイルを利用した送電塔からの電磁波と、地球大気圏の電離層を共振させることで、地球全体に定在波を起こし、地球上どこででもエネルギーを空間から受電できるようにする、という計画でした。


しかし、地球大気圏の共振周波数に比べてテスラコイルの周波数があまりにも高すぎたことや、使用した電磁波帯域の減衰が大きすぎることなどから、実用化されることはありませんでした。


このように、派手なわりに応用性が高くはなかったテスラコイルですが、無線で電力を送る技術そのものは、短い伝送距離ではあるもののスマホなどに普及しつつあります。

さらに、多くの研究者による解析の結果、テスラコイルの原理には近年のワイヤレス給電技術における、2つの方式の知見が隠されていたことがわかっています。


ひとつは、「磁界共鳴方式」です。

磁界ワイヤレス給電の実験

この方式では、それぞれLC共振器を兼ねた送電コイルと受電コイルが向かい合い、主磁束で結ばれることで、空中をエネルギーが伝わります。

テスラコイルにおいては、1次コイルと、自己共振性を持つ2次コイルが送電器と受電器の役割に対応し、隙間を隔てた2次コイルにエネルギーが伝わります。そして2次コイルの共振により高電圧が発生し、放電が起こります。


もうひとつは「電界共鳴方式」です。

電界ワイヤレス給電用に試作した送受電極板

これは、高周波電界を使ってエネルギーを空中伝送させるもので、大きな電極板が使われます。

テスラコイルにおいては、コイルの頭部に別のコイルを近づけたときに、この原理が働きます。強力な高周波電界によりコイルの端部に電圧が生じ、自己共振が起こることで、近づけたコイルからも放電現象が起こるのです。


さらにこれ以外に、テスラコイルには遅延伝送線路の原理も働きます。高調波の往復によって大きな定在波が生じ、高電圧発生の手助けになるそうです。


このように、古い発明や変わった技術の中にも、最新技術の原理の洞察に役立つヒントがあるというのは、とても興味深いことだと思っています。

これこそ、科学史のひとつの魅力ではないでしょうか?


ではでは~